ルシャ海岸の後にカメラの設定を変更したことで、より現実に近い色合いの写真になっているので、後編として特集します。
またまた奇岩奇景の連続。
非日常の景色とはいえ、ずっとこればっかりだったら飽きもそうだが、これがまた飽きないのである。
何度も来れるわけではない希少性が、そう感じさせるのだろうか。
断続的に現れる絶景を堪能し続けて、さすがに感覚がマヒしそうになってきた頃、いよいよクライマックスを迎える。
知床岬
出向から1時間半。遂に知床半島の突端に到達。初めて目にする知床岬である。
岬はなだらかな丘陵になっていて、先端を見下ろす位置に灯台が立っている。
灯台は、世界遺産登録時に立て替えられたそうだ。
それまでディーゼル発電だったのが、太陽光発電に切り替えられている。こんなに雲の多そうな場所で、ちゃんと発電できるのだろうか。
光源はLED。灯台も進化しているらしい。
突端に来たものの、周囲の分厚い雲はまったく晴れる素振りも見せず、却って更に濃度を増してきて覆いかぶさってくるかのようだ。
晴れていれば、間近に国後島が見えているはずだが、それも叶わず。残念。
初めての到達で、もっと感動するかなーと思ったら、意外なほど冷静にあっさりと捉えている自分がいた。
やっぱり自分の足で来なきゃなー。足って言っても歩いてというだけではなく、運転して、あるいは船漕いで(笑)来て初めて、爽快な到達感が得られるような気がする。
ま、知床岬には常識的にはこの方法しかないから仕方ないけど。それに、快晴だったらまた違った印象を受けたかもしれない。
大型船も追いついてきたので、クルーザーは踵を返して、再び波を切り始めた。
帰りは一直線に進むらしく、スピードを上げて沖合を一直線に行く。船体後部の屋外席に巻き込んでくる風が冷たい。
ぼんやり海面を眺めていると、イルカの群れが海面を跳ねていく。
咄嗟にカメラを向けるも間に合わず。再びクルーザーのエンジン音だけが鳴り響く時間が流れていく。
ルシャ海岸では再び、クマの姿を探して海岸近くを進む。先ほどの親子グマの姿は、既になかった。
ちなみにこのルシャ海岸が、知床岬クルーズでの一番のヒグマ遭遇ポイントで、この時期はかなりの高確率で見ることができるらしい。
たった1組の親子連れのヒグマだったが、見ることができてよかった。(ドライブ中は絶対に遭いたくないが)
ルシャ海岸以外は、とにかく一直線に帰る感じ。往路は断崖の近くに寄りながら、間近に奇景を楽しんだりして時間を忘れることができたが、復路はひたすら長い。
海上の風は冷たく、時折雨粒が落ちてくることもあり、体感上はかなり寒い。乗船時は全員船上に出ていたが、一人、また一人と船内に避難していく。
防寒用に持参した上着と、雨具代わりのアウターを着て臨んだので、ずっと外にいても問題なかったが、夏服のままだと耐えられるものではなかった。
外に出て間近に秘境の空気に触れることに意味はあるにしても、この天気だと少々忍耐が必要かもしれない。
それに、やっぱり晴天の光り輝く岬を見たかった。
・・・・・・・
約3時間の航行を終えて、ウトロの港に到着。身体は完全に冷え切っていた。
ウトロの道の駅で支度を整えてから出発。
国道334号を走り出すと、既に本降りになっていることに気が付いた。船上でこの雨に遭わなかっただけでも良かったな。
途中どこにも寄る気がしないまま、斜里方面へ。
斜里の街中にある道の駅に着いた時、どこか身体の調子がおかしいことに気が付く。
長時間冷風に身を晒したからだろうか。実はこの前の週に熱を出していたため、ぶり返したのかと思い焦った。こんなとこで寝込むわけにはいかない。
斜里の街中でドラッグストアを見つけたので、薬とドリンク剤を購入。
以前ならこんなことはなかったのだが、一度体調を崩すとなかなか全快できないのがもどかしい。トシだな。
斜里から国道244号へスイッチ。
小清水原生花園のパーキングにて、本日初めてツーリングらしい写真を撮る(笑
後ろに点々と見えているのは、放牧されている馬たちだ。
ふと我が愛馬の脚元に目をやると、これが酷い。まぁ雨天続きだから仕方ないが。。。
それにしても天気である。数日前の道東地方の予報では、昨日から今日にかけてが悪天候のピークだったはずだが、実際には昨晩はさほど降らず。悪天候がずれ込んでいるような感じ。そしてこの先もぱっとしないときている。
この先どうしようか・・・
そう、この先の行程は全くもってして未定なのである。
とりあえずの目的である知床岬は到達したので、残りの日程はある意味フリー。であれば、できるだけ天気の良さそうな方向に行けばいいのである。
ところが予報がまるでぱっとしない。その通り動いても裏切られる予感がムンムンするほど不安定な、夏の北海道の空なのであった。
藻琴駅
この辺りのR244は、釧網本線と並行している。
駅にはなぜか観光客が溢れていたが、藻琴駅だけは誰もいなかった。一瞬通り過ぎたが、可愛らしい木造の駅舎が気になって、引き返すことにした。
人の気配のない待合室。年季の入った羽目板と、図ってかそうでないのか微妙にカラフルなベンチに、何故だかソソられる。
さも当然のように無人駅なわけだが、かつて駅の事務室だったであろう部屋に、喫茶店が入っている。
身体が暖かい飲み物が欲して、客のいない店内へ。
鉄道グッズに囲まれて、何の変哲もないブレンドコーヒーをいただく。冷えた身体の隅々まで染み渡る。
旅の途中にcoffeeでほっこりする時間というのは、自分にとっては珍しい。いかにもな雰囲気の店ではあったが、少し活力が戻ってきた気がした。
・・・・・・・
R244で網走市街に入り、道の駅で今夜の食材を物色。
そう、体調がイマイチなのに、今晩はキャンプなのである。昨日はウトロで少々高価な宿に泊まってしまった(内容は贅沢とは程遠い宿だったが)ので、今晩は野宿しなければならない。
しなければならないということはないのだが、せっかく久々のキャンプツーリングだ!と息巻いているのに、宿ばっかりじゃあサマにならないし。。
網走駅前を通過。駅前のビジネスホテルの駐車場に、赤いNSXが停まっているのが目に入った。
駅前通りに並んだホテルに泊まるチャンスもあったが、ここで泊まったらグランドツアラーの名が廃る。(なんじゃそりゃ)
網走周辺にはいくつか利用しやすいキャンプ場がある。
国道39号に入って女満別(現在は大空町)。石北本線女満別駅の真裏にある、女満別湖畔キャンプ場が本日の停泊地だ。
林間の芝サイトで、湖畔はダート。2輪ツーリストは一様に湖畔に陣取っていたが、景色を楽しもうという発想はこの日はなかったので、駐車場に近い場所に幕営することにした。
一応有料で、駅裏の観光案内所みたいな場所で料金を払ったが格安。しかもゴミも引き取ってきくれるという。なかなか素晴らしいではないか。
実はここに来るのは初めてではない。キャンプをするのは初めてだが、真冬にここから網走湖でワカサギ釣りをしたことがある。
網走湖なんかでそんなことしたらもう、入れ食いも入れ食い。却ってちっとも面白くなかったのを覚えている。
そんな昔の記憶を蘇らせながら、体調を回復できるよう努めて早めに就寝したのであった。