松江で迎えた3日目の朝。
本日は「走る」ツーリングを一休みして、松江の街を散策しようという魂胆。
・・・ではあるのだが、ちょっと訪問したい所があって、松江近郊の玉造温泉へとエスを走らせる。
目的は温泉、ではなくて、とある窯元。
一昨年の隠岐ツーリングの際に訪れた松江のセレクトショップで見つけた器のデザインが忘れられず、その生産元への訪問を熱望していたのだ。
場所はJR玉造温泉駅の程近く。松江市街からわずか数十分。
湯町窯
駅前にある、大きなガラスの窓がショーウィンドウ代わりの民家が、目指した「湯町窯」だった。
開店と同時に入店。作品が飾り立てられているというよりは、実用的な食器が雑然と積み上げられているという趣の店内。
ただ、素朴ながらも艶やかな色彩を湛える陶器たちが集まることで、独特の美しさを醸し出している。
お目当てのスリップウェアの皿を物色していると、陶主に建物の奥の部屋に誘われる。
そこでは、湯町窯と交流のあった柳宗悦、バーナード・リーチ、棟方志功、河井寛次郎といった、そうそうたる芸術家たちの手による作品を目にすることになった。
いわゆる「民藝」の流れを汲んだ湯町窯。芸術の潮流や形式めいたことには疎いけれど、内在する美に起因する魅力に強烈な引力を感じる。
器はあくまで実用品なのだが、実用性というよりは美しいもの、琴線に触れるものを優先して、いくつかの器たちを購入。
お年は召しているものの明るく気さくで元気な陶主の福士さんとの会話も弾み、想い出深い訪問となった。
ルーフをオープンするS2000に「かっこいいね~かっこいいね~」とお褒めの言葉(?)をいただき、感謝の意を伝えてお別れ。
バックミラーには、どれだけ離れても大きく手を振ってくれていた福士さんの姿が印象的で、器の印象と同じく温もり豊かな窯元の訪問となった。
松江市街にとんぼ返りし、そのまま中心部の駐車場に駐めようと向かったものの、既にGWの観光客で溢れていて、長蛇の列が形成されていた。
離れた駐車場に入れるくらいなら、駅前のホテルに戻った方が賢明。ホテルの駐車場にエスをデポし、以降は徒歩での散策に。
そう言えば、朝飯がまだだった。
お堀の傍にあった珈琲館という、レンガ造りの瀟洒な喫茶室でブランチをいただく。
松江の街に城下町風情が残っているのは、張り巡らされた堀が、現代の街と共存しているからだろう。
眼下の堀川には観光船が往来し、晴れた休日の街の賑わいに一役買っている。
県庁などの庁舎が集まるエリアに歩を進めると、やがて視界の向こうに誇らしげに聳える天守が見えてくる。
大きな城郭の周囲を回遊し、三の丸から城壁を上っていく。
石垣の上にはかつての建物跡を思わせるオープンスペースとなっていたが、城門をくぐるとそこには圧巻の天守が。
松江城
城郭の主は、高さ約30mの威厳に満ちた荘厳な天守。
築造年は1611年。明治初期にほとんど取り壊された全国の城の中にあって、山陰では唯一残ったオリジナル。
歴史的価値が再評価され、遂に昨年、国宝の仲間入りを果たした。城としては全国5番目の国宝というレア物件なのである。(ちなみに残りの4城は、姫路、彦根、犬山、松本)
その外観に圧倒されてひとしきり眺めた後に、天守に上ってみる。
オリジナルが残る城の常で、階段は非常に急で、手摺無しではなかなか昇降できない。
内部には様々な展示物があるが、松江城の注目はその建物そのものだと思う。
当時の建築なので、内部空間に露出する構造体そのものも、400年間耐え抜いてきた質感にあふれている。
全国に城は数あれど、年輪を重ねた重層城塞の内部空間を体感できる遺構は少ない。
最上階から松江市街を眺める。
周囲を堀に囲まれた城の敷地の北側には、城下町を名残りを垣間見る低層の街並みが残っていた。
国宝指定は話題としてはまだフレッシュなのか、それとも単なる城ブームなのか、思った以上に観光客で溢れていた。
つい先日の熊本地震では、熊本城が甚大な被害を受けてしまったが、そのことで、自然災害によって歴史的な遺産もいつ失われてしまうかわからないということを改めて思い知らされた。
熊本地震を契機に、文化財に興味を持ち、より大切にしようという機運が高まればと思う。
熊本城の復興に時間と労力を要することは現実として受け止めなければならないが、せめて世間の意識が今より更に高まるきっかけになることを願わずにいられない。
1枚目、面白いですね。市松模様みたいです。
松江城、素晴らしいですね。
熊本城は完全に復旧するのは5年、10年先なんでしょうね。
立体駐車場上階のパンチングメタルを通した光の効果が面白かったので、切り取ってみました。
熊本城が被害を受けた後の訪問でしたが、熊本城が大変なことになってしまったことを受けて、敢えて訪問しました。
文化財はオイソレと改築できませんが、後世に残し歴史に学ぶために文化財を伝える機運を高めることが大切だと思います。
本文中にも書きましたが、失ってからでは遅い。熊本城の被害を無駄にしないためにも、広く文化財の魅力を体感できればと。
完全復旧には時間を要するでしょう(特に石垣は)けど、立派な城郭で日本史上重要な舞台でもあるので、きっと修復が成される日が来ると信じています。
松江城が国宝に登録されたのは知りませんでした。
国宝級の城は、外観も然ることながら、内部の構造体にも刺激されますね。
奇遇ですが、私もGWは姫路城に立ち寄りました。
1000円という入場料は、初めは高いと思いましたが、半日楽しんだ後は
充分モトを取った気がしました。(笑)
国宝の格に相応しい天守でした。
木造高層建築を支える構造体には、涙ぐましい補強の跡が残っており、それが国宝松江城の見処になってたりします。
姫路城も改修が完了しましたからね。久しぶりに訪れてみたい。
しかしいくら日本一有名な国宝の城とは言えど、1000円とは強気ですね。
法隆寺が1000円オーバー(1500円)でしたが、自分の知る限りはそれに次ぐ高額物件です(笑