R style的金沢探訪、まだしばらく続きますので、どうかお付き合いを。。
浅野川界隈
金沢市街には2本の大きな川が流れています。
西を流れる犀川、東を流れる浅野川。
犀川は別名「男川」、浅野川は「女川」と呼ばれる辺りがまた、いかにも風流な金沢らしい。
女川と呼ばれる浅野川は、その名の如く静かで穏やかな表情の川。
その女川の界隈では、その川の流れのイメージ同様、繊細で可憐な街並みを楽しむことができます。
市中心部からひがし茶屋街に向かう際に渡る浅野川大橋(国道359号城北大通り)の上流側には、梅の橋という木造欄干の橋があります。
卯辰山と金沢町家を背景にした橋の景観は、まさにザ・金沢。金沢独特の景観のひとつ。
更に浅野川大橋の下流側には、似たような橋で中の橋があり、こちらも必見。
先のひがし茶屋街で出てきた泉鏡花「照葉狂言」の舞台、らしい中の橋。
この橋ともうひとつ下流側の小橋には、幼少の頃よく散歩に来ました。(実家がこのすぐ近くにある)
この界隈は自分のとっての原風景であり、大きな影響を受けた都市空間なのです。
主計町茶屋街
その浅野川の河岸に寄り添って立ち並ぶ、金沢3つ目の茶屋街が、主計町(かずえまち)です。
主計町は、ひがし・にしの茶屋街ほどの知名度はないかもしれませんが、もっとも風情豊かで、往時の趣も残しているのではないかと個人的には感じています。
川沿いという立地条件がまた格別。優しい流れの浅野川と石畳。過剰な演出のない、ありのままの町家の街並み。
マイナーがゆえに、変に観光地化されず、程良く保存に注力されている程度がちょうどいい。見て歩いて全く違和感なく感じられ、それでいてしっとりと心に残る街並み景観がここにあります。
メインストリートは浅野川の河畔。柳の並木も実に程良い。夏になると、京都ばりに川床も設置されます。
川が見えるこの通りもイイんですが、主計町にはもうひとつの表情が。
それが町家と町家の間に毛細血管のように通る路地。
非常に小さな茶屋街なので数は少ないですが、その1本1本に、独特の趣があります。
路地を歩いていると、突然坂が現れたり。
三次元に展開する狭小路地空間の魅力には、訪れる度に悶絶します。
こんな空間にゾクゾクしてるのは自分だけでしょうけど(笑
お茶屋街なので、一見さんお断りのお茶屋や高級料亭ばかりで、建物の中身には縁がないとずっと思ってきましたが、最近ではそうでもないようです。
ただそうは言っても、ひがしに比べるとマイナーで、観光客向けの気軽なお店はほとんどないのは事実。
それがゆえに静かに街並みを楽しめるわけですが。
観光客向けの店がないということは、素の金沢を楽しむことができる可能性が高いというのも、主計町の魅力。
老舗料亭はそこそこのお値段ですが、手が届かないわけではありません。一度は入ってみたいお店はいくつもあります。
そんな有名店も良いけれど、主計町でオススメのお店を紹介するならば、敢えて歴史の浅いこのお店。
「嗜季」
主計町茶屋街のメインストリートに面する、小さくて質素な町家。隠れるようにしてこのお店は佇んでいます。
外見は何も手を付けていないかのようですが、内部には大胆に改修しながらも、町家の空気感を上手に残した空間を携えています。
このお店では、季節の食材を生かしたコース料理がメイン。
薄暗い空間の中で唯一照らされたカウンターで、若いご主人が料理に腕を振るいます。
伝統的な加賀料理にこだわらず、金沢で手に入る季節の食材を使って、金沢らしい感性で食を楽しませてくれる「ニュー割烹」(?)
そんな自由なスタイルの料理を、モダンな感性で再構築した町家空間で味わえるというのがいい。
料理は手が込んでいて独創的。見た目も美しいのは、料理同様コダワリあると思われる器の影響も大きい。
カウンターに座り、白ワインを傾けながら、若いご主人との会話を楽しみつつ、食と空間を一度に楽しむ。金沢にありそうでなかったお店。
主計町の街並みにひっそりと佇む、隠れ家的存在です。